【2021年 2月 LJO】12月以降、プレオベール政権が記録的な支持率を維持する中、ことし1月に統一地方選挙が行われた。
メディアは「政権が皇帝へ議会解散を働きかけ、1月の統一地方選挙に合わせた総選挙を仕掛ける」と予測を立てていたが、実際には解散は行われなかった。
統一地方選挙は1月24日に決選投票が行われ、大都市リヨン、ボルドーの首長選挙は与党系候補が野党系の現職を破って勝利、
ストラブール、ナント、トゥールーズでは与党系の現職が守り抜くなど、与党勢力が大都市をほとんど制覇し、歴史的勝利を収める結果に終わった。
なお、投票率は46%と平年並みであった。
地方選挙で鮮明になった野党共倒れの構図
このような与党大勝の裏で、共倒れに陥っているのが野党だ。
改革派同盟=フランス民主党(AR-PDF)、国民自由党(LP)、社会党(社会主義インターナショナル・フランス支部、SFIS)をはじめとする主要野党は今回の統一地方選挙で足並みをそろえることができず、第一ラウンドでの敗退候補が続出した。
野党において唯一例外的に勢力を拡大したのは、「民主社会主義者」で知られるロール・コルベル下院議員率いる急進左派の「抵抗者(RÉSISTER)」党と、陰謀論・排外主義を訴える「祖国防衛戦線(FDP)」という、両極端な勢力だった。
壊滅状態の社会党は新体制に移行も、埋まらぬ党内の溝
統一地方選において、特に足並みの乱れが顕著だったのは左派勢力だ。
急進的な「抵抗者」が躍進を続けるのに対し、穏健路線で低迷中の社会党は、首長選では大半の候補が第1ラウンドで敗退。決選投票では同じ左派勢力であった抵抗者党を支援せずに戦略的棄権に走り、政権与党をアシストするという行動をとったことで、コルベル氏から「自殺行為」と非難され、党内急進派からも厳しい批判が浴びせられた。
一方マルセイユ首長選では現職の社会党候補が善戦し、祖国防衛戦線候補との決選投票となり、与党による支援も受けて再選を果たすことができた。
しかし、結果的に社会党はマルセイユを除いて目立った勝利を手にすることができず、多くの自治体議会選挙で議席を減らし、壊滅的な打撃を受けた。
統一地方選挙以降、党員が増加の一途をたどっている抵抗者党に対し、社会党は大幅な減少を続けている。
こうした状況を受けて、社会党で6年間第一書記を務めてきたバイ(Joël Germain BAYE)下院議員は辞任を表明。
2月の党大会で新たに社会党左派の積極財政派で与党に近い立場のガストン・クルーゾー(Gaston CLOUZOT)下院議員が選出された。
クルーゾー第一書記の就任には反発する声も多く、ブレソール・キュリー(Bressole CURIE)氏をはじめ、財政規律を重視する緊縮派はAR-PDFとの協調を主張しており、主流派との対立が深まっている。
クルーゾー氏は今後の方針として、政策の近い与党APとの協力路線を模索するとみられているが、人工妊娠中絶や帝政のありかたをめぐる政治的価値観で両党には大きな違いがあり、反主流派を切り捨てたとしても協力関係の構築は難しいとされている。
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