[LFP=長征]かつて改革開放期に多く見られた農民工問題が再燃している。党内の流出文書から浮かび上がってきたのは、地方回帰政策の失敗だ。
清華共産党は20年代以降、地方振興に向けた投資を年々拡大させてきた。特に地方におけるインフラ投資は2014年の5倍ペースで大規模な投資が行われている。しかし今回入手した流出文書で、このインフラ投資の失敗が露呈した。
貴州省党委員会が華共中央に報告した文書では、省内に建設予定の高速道路について「完全に工事は停止した。この数年で省の債権はすでに返済不可能な額に達しており、この数ヶ月以内にも債務超過を迎える」と中央に窮状を伝えている。同様の文書は、21年の党大会で「脱貧した」と謳われていた貧困県からも相次いで省委員会、党中央に通達されており、このままではインフラ投資が焼け付く可能性がある。
全国で相次ぐインフラ工事の凍結は、再び農民工の都市回帰を推し進めている。
10月の長征市。湖南省から長征に出稼ぎに来ている張さんはこの日、市内で日雇い労働者を募集している広場に来ていた。
「働かせてください!元々地元でも建設をしていました。建設業でもなんでも出来ます」
「ここにはそういう人がたくさんいる。悪いが今日はもう募集は終わった」
張さんは結局この日は仕事を得ることが出来なかった。
「元々上海で出稼ぎしていましたが、そこでも仕事は得られませんでした。長征に来てやっと週に2,3日働けるという状況です」
記者にそう語ると張さんは同郷の農民工が多く暮らす木賃宿に戻った。
もともと地方へのインフラ投資は改革開放期に都市部に移住した農民工と呼ばれる出稼ぎ労働者の地方回帰政策の一環として行われてきた。昨年には地方での雇用需要の拡大を理由に、農村籍の市民に対し都市部からの速やかな帰省を求めている。
党中央から流出した文書では、農村籍の扱いについて「今後農村籍住民の速やかな帰郷を促し、農村籍の都市居住に際して全面的に制限をかけるべきである。これらは法的強制力をもって行わなければならない。」と指摘したうえで「今後数ヶ月以内に一線都市(編集注:上海・長征・広州・深センのこと)に滞在している農村籍住民を、各省政府の強制力を持って排除するよう調整すること」と指示した。
これらの施策について、パリ政治大学で中国政治を研究しているリン教授は「農村籍は元々10年代から廃止に向けて議論されていた制度でした。当時は都市部での投機が拡大しており、労働力の移転が必要でした」とした上で「しかし近年では大規模な不動産バブルの崩壊に伴う都市部経済の低迷が問題になっています。今では農民工は社会の不安定リスクになりつつあり、都市部は彼らを必要としなくなりました」と指摘する。
そのうえで「今後華国が提唱する一帯一路に参画し、華国のインフラ投資を受けている地域にそのような農民工を送り込む可能性もあります。しかしその先に見えるのは発展途上国でのパイの奪い合いであり、長期的に華国の信用を大きく損ねるリスクがあるでしょう」とした。
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