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【過去記事】マントン会談が明らかにした臆病なフランス外交の実態

更新日:2022年7月31日


【2021年 3月23日 LJO】今月15日、コート・ダジュールをのぞむフランスのリゾート地、マントンのホテルで実に半年ぶりの仏華首脳会談が行われた。会談では華国が各国から非難を受けている人権問題に関する華国側の釈明、および華国による欧州経済への参入などが話し合われたが、実りのある具体的な成果は得られず、物別れに終わったとみられている。


華国の「ウイグル、チベット、香港問題は完璧に民主的に法の支配によって統制されており、EC加盟国の一部が懸念するようなことは存在しない」という主張に対して、

フランスは「われわれは貴国の主張を無視するつもりはないし、貴国の立場も十分に理解しているつもりだ。われわれは貴国を信頼しているので、ジェノサイドや民主主義の抑圧といった非道で恥ずべき行為を行っていると信じたくはない。今後より円滑な友好関係を構築していくためにも、第三者による調査団を受け入れるなどして客観的な事実を明らかにし、民主主義諸国の指摘がまったくの杞憂であることいち早く証明してほしい。」

と婉曲的な返答を行った。


またフランス側は、華国からの一連の提案に対しては前向きな姿勢を見せつつも、「自国やヨーロッパの利益のみならず国際益を重視するとともに、途上国の持続可能な開発を目指す方針でいる。責任ある大国の立場として、国民的意思の判断によっては、そのためのいかなる代償も厭わないつもりだ。」と返答するなど、一帯一路を通じて自国本位の投資を進める華国を暗に牽制する形に終始した。


マントン会談は、傲慢な華国外交に対する世界的な反発が強まっている中、主要先進国のなかでは華国との関係を維持し続けているプレオベール政権が、改めて華国に対する微妙な距離感をあらわにした瞬間であったと同時に、「ウィ」とも「ノン」とも言えないフランス外交の弱腰姿勢が露呈した瞬間でもあったと言える。


“穏健”外交に対する政権内タカ派の不満

しかし、バッチョッキ元老院議員をはじめとする政権内タカ派はこうしたプレオベール首相の外交方針について強い不満を示している。

匿名のある与党幹部はLJOに対して「華国は到底信用できる国ではない。イスラエルに対し経済戦争を仕掛け、恫喝を行った。対話さえ行われずに。我が国の国民はこれをどう思うか。おぞましい出来事だと感じているだろう。」

「国際社会は清華に厳しい目を向けているが、首相はそうではない。首相の外交は穏健なんてものではなく、単なる臆病だ。責任ある大国としての義務をまるで果たせていない。同盟国も皆が失望しているだろう。」と語り、首相の弱腰姿勢に不満をあらわにした。


ほかにも、各国の投資やインフラ開発に深くかかわる一帯一路への参加は、内閣に許された外交の範疇を大きく超えており、本来必要であった議会や国務院での議論も十分に行われてこなかったという視点から、民意が軽視されているとして反対する声もある。彼らは一帯一路を国民投票にはかることを強く訴えている。


バッチョッキ氏やトレスプーシュ氏のほか、ジルベルスタイン氏が主導的地位となっている与党内の「反一帯一路派」は、一致団結して仏中関係の深化に抵抗を示す姿勢だ。反一帯一路派は一帯一路参加の是非を問う国民投票を実施し、一刻も早く華国とのデカップリングを推進するつもりでいる。


一帯一路に対するフランス世論の感情

実のところ、フランスの一帯一路加盟については政府のみならず、世論においても反応が芳しくない。OFPSが行った調査によれば、「フランスの一帯一路加盟にはリスクがあると思うか」という質問に対し、3800人のサンプルのうち、48%が「リスクがあると思う」と答え、「リスクはないと思う」と答えたのは28%にとどまった。


他方で、リスクを理解しながらも一帯一路参加を支持する声もあり、一帯一路に対する世論のとらえ方は三者三様である。

「一帯一路参加はフランスが清華の経済的植民地になることを意味する」、「独裁国家である清華との関係強化は危険だ」という批判もあれば、

「米国の大企業によってヨーロッパは経済侵略を受け、自立を脅かされつつある。中華資本と結びついて対抗することは当然」「中華資本は近年力をつけつつあり、インフラ投資によって見込める経済効果は計り知れない」といった肯定意見もある。

世論はまさに混沌とした様相だが、大方の予想では、もし国民投票が行われるとしたら、一帯一路からの離脱は避けられないとみられている。


「フランス一国の都合で同盟国や国民を犠牲にし、危険に晒すことはあってはならない。外交的・軍事的連帯はその前提を守るためにある。」

かつてそのように語り、今では華国との衝突を極度に避けているプレオベール首相だが、内外の世論に目を向ければ、フランスの対華強硬路線を望む声はあまりにも大きい。

この矛盾をどう繕っていくのか、首相の手腕が問われる。

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