(画像:今回会談が行われたコーチシナ・サイゴン市のノロドム宮殿)
【2020年 9月25日 LJO】23日、プレオベール首相は海外領土コーチシナのサイゴンを訪問し、ノロドム宮殿においてインドネシアのドゴロニデ(do goronide)首相、東洋連邦の袁要心首相と相次いで首脳会談を行った。政府の外交筋から得た情報によると、今回の首脳会談は東洋とインドネシアの外交的立場を「見極める」ために行われたという。
首脳陣は24日、三国での首脳会談を終えたあとで共同記者会見を開催し、各国首脳によって今回の会談でなされた決定が説明された。
フランスとインドネシアは資源開発で協力
フランスとインドネシアは今や『精神的同盟国』となりつつある。フランスはインドネシアとのより強固な信頼関係を確立するため、これからも必要な支援を行うつもりだ。
今回の会談で決められたことは、フランスとしての誠意を示し、彼らとの友情と連帯の道を開く事を目的としている。もちろんそれは今後の双方のビジネスにも良いものをもたらしてくれるだろう。──プレオベール首相 会見にて
フランスは今回の会談で、インドネシアとの資源開発で合意した。両国は東ナトゥナとチャプにおける開発事業に着手し、フランスはインドネシアに対し幾つかの技術供与を支援する。
首相はインドネシアについて「近年急成長を遂げる資源大国」であると認識し、それぞれの経済の為にもフランスとインドネシアの友好、信頼関係の構築は重要だとした。
「フランスは複数の大企業がインドネシアに進出し、資源開発を行っている背景があります。今回の会談を機に関係はより進展し、経済的結びつきも強まるでしょう。今後は双方の間でさらに大きな資本が動くことになると予想されます。これは財界にとっては非常に好ましい出来事でしょう。
首相からすれば、まだまだ前途の明るいインドネシアにヨーロッパ市場の『橋頭保』を築くため、フランスをはじめとするヨーロッパ諸国の『クリーンさ』をアピールする狙いがあるのではないでしょうか。プレオベール首相はいま野党の攻勢や世論の懐疑的姿勢から国内の改革が滞っていますから、外交面で成果を出して求心力を得たい状況です。
今回の会談でも信頼獲得と外交的地位の向上を意図しているのは明らかです。アメリカは世界を凌駕する圧倒的な経済力と軍事的プレゼンス、中華連合は持ち前の資金力によって他国との関係を進めている中、フランスは決して小さな国ではありませんが、これらの超大国のように突出した『強み』を持ち合わせていません。
そういう立場を考えると、これまでの歴史で培われた友愛の精神に基づいた外交政策で国際社会の信頼を得る、というプレオベール首相の方針は一番地道で堅実なのかもしれません。」──国際政治の専門家 エミール・ルエ氏
フランスと東洋は軍事的連帯をさらに強化へ
東洋との会談では、仏東同盟の今後もふくめ、軍事的に様々な決定がなされた。
安全保障上のホットスポットである南シナ海(東洋では「東越南海」とも呼称される)に面し、歴史的、地理的、政治的につながりの深い両国の関係において、軍事同盟は重要な要素となっている。プレオベール首相は袁首相との会談で同盟関係を再確認し、フランスと東洋は「運命を共にする」という意志を改めて内外に示した。
フランスと東洋の同盟関係は”互恵的”なものであり、フランスと東洋連邦は相互的に安全保障上の義務と責任を共有する。──記者会見より
プレオベールは”武器商人”?
(画像:2021年退役予定のD615 ド・ヴィルヌーヴ)
軍事同盟のほか、フランス・東洋による新型フリゲート開発計画の始動、フランスの退役予定のフリゲート「D615 ド・ヴィルヌーヴ」「D645 アンリ・サラウン」を退役後、東洋に対してそれぞれ1億2000万帝国フランで売却、ミュラ戦車などの兵器を新たに東洋へ輸出することなどについても合意に至った。
今回東洋への大量の武器供給を決定した理由をひも解くには、プレオベール首相が進めてきた「軍事改革」を知る必要がある。フランス軍はこれまで膨大なコストに苦しめられ、歴代の政府は強引に予算をカットすることでコストを抑えてきた。結果、2019年には整備不足が間接的な原因となり、巡洋艦タレーランが座礁する事故が起こる始末となった。
プレオベール首相は軍人としてキャリアを積んできた立場から、末期ヴェイユ政権で国防相に任命され、「軍事改革」を主導、軍の近代化とコスト削減を担当してきた。それは首相就任以降も変わらない。プレオベール首相が進める「質を高め、コストを抑える」軍事改革は、先日の仏英軍事協力や今回の仏東軍事協力にリンクする。軍事協力は外交政策の意味合い以上に、「カネ」の要素も無視できない。
首相が推進する軍事協力政策では、相互安全保障に加えて「共同での兵器開発」にも焦点が置かれている。英国との軍事協力はこまごまとした摩擦を生むこともあったが、コスト的な面では双方の財政改善に貢献している。今回の場合、東洋への武器輸出が決定したことも今後の調達価格を抑えるうえで役に立つだろう。
首脳会談は”友情”を強くアピール
プレオベール首相は今回の会談を通して、それぞれの国との「友情」と「連帯」を強く強調した。近年南シナ海に対して強い興味を示す中華連合に対する牽制の意味合いが込められていると見られる。プレオベール首相は7月の仏中会談で中華との連帯をビジネスライクと限定したが、それとは対照的に今回の会談では積極的な姿勢をみせた。
「フランスの太平洋地域における影響力がいまだ色あせていないことが証明されたというのは間違いないでしょう。プレオベール首相は東洋やインドネシアに寄り添う姿勢をありありと見せつけましたが、反面、彼がフランスと中華連合との友好路線を決定づけ、旧来の友好国を失望させたのも最近の出来事です。
この会談での決定が今後何をもたらすか、詳しい言及は難しいですが、少なくとも中華連合は何らかの『好ましくない反応』を示してくることはおおよそ間違いないでしょう。中華連合は南シナ海において強硬に野心的な主張を続けている立場ですからね。それだけでなく最近はインドネシアにも興味を示してきましたから。
そういう状況で、フランスはインドネシアや東洋にも、中国にも良い顔をし続けることは絶対に出来ないでしょうね。つまり、『審判の時』はそう遠くないうちにやってくるはず、ということです。そのときがプレオベール首相にとっては腕の見せ所となるのではないでしょうか。」──国際政治の専門家エミール・ルエ氏
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