【2020年 12月5日 LJO】12月5日、フランスが選挙を終え、前軍事大臣であったプレオベール氏が新たな首相に指名されてから、一年が経過する。
プレオベール政権の一年間の動向
2019年12月
「帝国万歳!(のちに人民への訴えに改称)」「キリスト教保守党」「新緑の党」連立による新内閣を組閣。少数派内閣。
2020年1月
財政再建の目標を無視し、大幅な拡大に踏み切った予算案を巡り、野党と対立。「国民投票」に踏み切り、勝利する。
2020年4月
「スエズ危機」に対処するため、スエズ運河周辺地域へ仏軍展開を指示。ストックホルムでバルト海の非武装化へ向けた取り組みを主導。
2020年7月
フランス帝国ニースでG7サミットを主催。
2020年8月
清華政府と関係を改善する取り組みの一環として、一帯一路への事実上の参加を表明。
ジョー・ブルースター英首相と会談。「カムデンプレイス条約」の拡大で一致し、英仏の友好関係と軍事面での協力関係を深めた。
2020年9月
英土キプロス危機の収束に向けた和平交渉を主導。
2020年10月
株価指数が6000フランを上回る。10年間で最高値を更新。
2020年12月
政権発足から1年が経過。
政権への支持率は向上、50%を上回る異例の事態に。
11月15日、エコー・ド・パリ紙は独自の世論調査を発表し、驚くべき結果を示した。
同紙によれば、プレオベール首相に対する支持率は52.4%、不支持率は32.2%。軍部出身なだけでなく、帝政の熱烈な支持者として知られるプレオベールだが、左翼的傾向の強いパリでも37%が支持すると答える異例の事態となっている。
歴代の首相で支持率が40%を上回ることは、フランスにおいては極めてまれな出来事だ。高支持率の背景には、長年膨大な予算を必要としていた軍事における迅速な改革の成功、労働組合との交渉の進展、積極的な外交政策等が挙げられる。
プレオベール政権はこれまで政治的な求心力を得ることに終始し、軍事や外交に比重を割いてきた。政治評論家のエミール・ルエ氏によれば、今回プレオベール氏が支持を高めたことは、今後の政策転換に繋がるという。
プレオベールはこれまで自らの信頼獲得を第一に考えて、主に外交面での成果を急いできました。今回の高支持率は政権に確固たる自信を与えることになったでしょう。今後は本丸である経済政策に関して、彼らしい大胆な政策が実行に移されるかもしれません。
一方で、同氏によれば政権にはまだまだ課題があるとも。
軍事改革には一定の成果が見え、ヴェイユ政権時代の税制が軌道に乗ったことで、財政改善のめどは立ちつつあります。しかし、経済成長という面ではあまり具体的な成果を出せずにいますし、多くの国民はそれを不満に思っているでしょう。多くの人は低迷する経済に変化を求めていますが、この政権はまだそれをもたらすことができていません。
プレオベール人気の背景とは?
プレオベール氏が首相に就任した時点では、その人柄などから政策の想像がつかず、不安に思う意見も多数存在した。
これまでの首相と違ってエリートには見えず(本来はサン=シール校という名門の出身だが)、軍人上がりヒステリックな一面を持つ彼の前評判はとにかく悪かった。
しかし、ふたを開けて見れば意外と「普通」だった彼の政治は、国民にかえって好印象を与えたようだ。
プレオベール首相はこれまでの保守的な政治家と打って変わり、「真のボナパルティスム」実践を試みており、ジョゼフ=ナポレオン皇太子の「側近」という面もある。ラヴィオレット氏のようなカトリシスム的な旧保守派や、世俗主義に迎合したロニョン氏やヴェイユ氏のような新保守派とはまた、異なる立場を取っている。
プレオベールは昨年可決されたモンタニー法案(人工妊娠中絶合法化法案)に対して反対の立場であることから、カトリック保守派から強い支持を受ける反面、彼はカトリックの価値観以上に「帝政の価値観」すなわちボナパルティズムをと訴えている。
転義的に捉えるならば、右翼、左翼という対立構造を調整する存在として、自らを位置付けているということだ。もっとも、ナポレオン大帝や歴代皇帝のような世俗性は持ち合わせていないようだが。
しかし、保守でありながらも「革新性」をはらんだ人物という部分は、ヴェイユ氏にも似た「面白さ」を感じさせる。
プレオベール氏の歯に衣着せぬ物言いもまた、彼の個人的な人気を高める要因となっている。軍事相時代、軍事改革をめぐってSFISのルセ代議士(Christine ROUSET)と議論になった際、軍を「Meurtriers(殺人集団)」と侮辱したルセ氏の発言に激怒し、激しい言葉で非難を浴びせるといったエピソードは、彼の印象を強めた。そうした「情に厚く、インテリとは一味違う」というイメージはカトリックの強い地方で高い人気を誇る。
プレオベール政権の今後
世論調査が高い支持を示した半面、数多くの専門家が、プレオベールの政策には安定感やバランス、先見性がないと指摘している。
プレオベール政権はメキシコやエジプト、清華といったリスキーな国との関係を未だに継続しています。しかし、自由や民主主義といった西欧の価値観を重視するプレオベール政権では、彼らとの関係が絶対に長続きしないことは容易に想像がつきます。彼らはこれから、いくつかの失敗を味わうことになるでしょうし、その際に外交的な信頼性を損なう可能性も想定されます。
と国際政治の専門家エミール・ルエ氏は語る。同氏はまた、「これまでは外交面に力を割いていたが、今後は国内の経済政策にも力を入れ始めるだろうし、そうなると外交面で露呈した彼らの『欠点』がよりクローズアップされ、国民の不満につながる懸念もある」
との見方も示した。
現政権は少数派内閣であり、内政面では特に代議院の反発でフラストレーションを溜める機会が多々ありました。実績を上げ、国民からの信頼を獲得しつつある今、彼らが解散選挙を仕掛ける可能性は大いにあります。
エコー・ド・パリの出した結果は首相を大いに勇気づけるものでした。もし来年まで大きな変化がなければ、彼は去年の11月よりもはるかに大きな勝利を掴むことができるでしょう。
ENA(国立行政学院)で政治学を専門とするオリーヴ・ノギャレ(Olive NOGARET)氏はそのような予測を立てている。プレオベール政権がもし解散選挙でヴェイユ前首相と同じような結末を辿れば、フランスの政治はより混迷を極めることになるだろう。
ノギャレ氏は昨年同様、少数派内閣の影響で12月までに予算を決定することが出来なければ、1月の地方選挙に合わせる形で解散選挙を行う可能性があるとした。
一体、今後フランスはどのような道をたどることになるのだろうか。
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