【2021年 4月17日 LJO】今月15日、フランスのオート=ヴィエンヌ県に位置するシャンネトゥリー原発の労働組合が、ストライキを宣言した。
シャンネトゥリー原発は1979~80年に操業を開始し現在も運転を続けている、フランスで最も老朽化の進んだ原子力発電所の一つで、近年は専門家により「事故のリスクがきわめて高まっている」との指摘をたびたび受けている場所でもある。
「シャンネトゥリー原発労働組合」は、老朽化に伴う懸念を受け、従業員に対する保障の拡大を求め、原発の管理会社である帝国電力機構(OIE)との交渉を1か月にわたり行った。
最終的に、OIE側は「老朽化による事故のリスクは限りなく抑制している。我々がシャンネトゥリーの労働者に危険な労働を強いている事実はなく、また、シャンネトゥリーにおける賃金や福利厚生、保障に関しては他の事業と比較しても高い水準であることも考慮すべきだ。組合側の要求するコストは我々の事業の破綻を招きかねないものであり、受け入れられない。」として、要求を拒否したため、組合は最終手段としてストライキに打って出ることを表明した。
ストライキは県政にも波及し、オート=ヴィエンヌ県議会の第一党である社会党はストライキ支持を表明、組合側に同調した一方、第二党の「自由民主ブロック」は、OIEと政府の側に立ち、組合の攻撃的な姿勢に疑問を呈し、政局は二分されている。
きょう(17日)、OIEは会見を開き、「要求に応じるという選択肢は検討していない」として、改めて組合側との対決姿勢を鮮明にしたほか、ストライキによる電力供給への懸念については「現状は問題なく運転が可能」と説明した。
ストライキ決行から2日が経過したが、現場を取材した記者によれば、従業員の間では組合上層部の方針に懐疑的な意見が多数を占めているようで、ストライキの効果はほとんど上がっていないことが伺え、仮に争議が長期化したとしても操業に支障をきたすほどの打撃を与えることは難しいとみられている。
なお、シャンネトゥリー原発労働組合はSFTN(フランス原子力産業労働組合)に加盟しているが、SFTNは今回のストライキに対する姿勢をいまだ明らかにしていないことが、エコノミストの間では不安要因として取りざたされている。SFTNとOIEは長らく労使協調の関係にあったが、今回のストライキが関係に変化をもたらす可能性も否定できない。
OIEはヨーロッパにおいて数十%にも及ぶ電力のシェアを担い、世界最大級の電力事業を扱う会社だが、その資本は大半が国による出資だ。OIEが労組との闘争に突入することは、国家単位で「最悪のシナリオ」であり、そういった懸念がSFTNの消極的な対応を招いていると推測されている。
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